京都家庭裁判所 昭和38年(家)1608号 審判 1963年12月07日
申立人 甲野花子(仮名)
被相続人 亡甲野一郎(仮名)
主文
被相続人の遺産である
京都市左京区○○○○町○○番地の○宅地六五坪五合二勺及び同所同番地家屋番号同町○○番木造瓦葺二階建居宅、床面積一階一五坪五合八勺二階七坪四合五勺
をいずれも申立人に附与する。
理由
申立人は主文同旨の審判を求めた。
よつて本件記録添付の各戸籍謄本及び本件不動産(主文記載の土地、家屋を言う。以下同じ)の登記簿謄本の各記載、相続財産管理人乙野松子作成にかかる相続財産管理計算書、申立本人尋問及び前記乙野の審問の結果、当庁昭和三四年(家)第二三九七号、同昭和三七年(家)第二一〇八号及び同昭和三七年(家)第五三六号各事件記録を綜合して考えると、
被相続人は申立人の亡夫甲野二郎の長男で申立人は二郎の後妻であり、申立人と被相続人とは継母子関係にある。申立人は二郎と婚姻後まもなく、その費用の略半分宛を出し合つて本件土地家屋を購入新築したものであるが、名義上は被相続人の所有物として登記した。申立人は被相続人に対し特に非難さるべき態度を取つたことはないが、同人は父二郎の死亡した昭和二三年頃から浪費が甚しくなり、遂に昭和二四年八月一八日本件不動産を除き、可成の債務を残して自殺するに至つた。申立人は自己の財産を以て、被相続人の丙野、丁野に対する債務金五〇余万円を立替支払つた外、葬儀費用、本件不動産の固定資産税等総計約六六万円の立替払をなした。被相続人には相続人がなかつたので、乙野松子を相続財産管理人に選任し同人の相続債権申出の催告に対し申立人は上記立替金債権の申出をなしたが、その後前記立替金以外の固定資産税等を含め一切の立替金債権合計金七〇万四、一七五円を放棄した。当裁判所は昭和三八年一月一一日期限を同年七月三〇日までと定めて相続人搜索の公告をなしたが、相続権を主張するものがなく同年九月二日本件審判の申立がなされた。相続財産管理人は報酬を請求せず、本件不動産以外何等の清算すべき債務は残つていないことの各事実を認定することができる。
そして以上認定の事実によれば、本件不動産全部を被相続人の特別の縁故者として申立人に附与するのは相当であると認められるので主文のとおり審判する。
(家事審判官 吉田時博)